概要
枕の必要性
そもそも枕は何のために必要なのでしょうか。
多くの人は「寝ている間に頭を乗せておくもののためでしょう」と答えるかもしれません。
肩こりや腰痛があり、少しでも枕に関心がある人なら「就寝中の首の位置を正しく保つために必要な道具」と答えるかもしれませんし、「睡眠時に正しい姿勢を保つためには首の位置がとても重要になるので、枕によってその正しい位置を保つために使っているのだ」と付け加える人がいるかもしれません。
ここまで答えられれば、相当枕についての造詣が深い整形外科医か寝具店の店員レベルです。
枕で肩こりを解消させる
脳と体をつなぐ最も重要な連結部分が首で、ここには大切な神経が集中しています。
睡眠時の首の位置は枕によって決まってくるので、いかに枕が重要かを理解していただけると思います。
もちろん、頸椎に障害があったり、年齢のために頸椎が変形してしまったり、頸椎の椎間板ヘルニアと診断されている患者さんなどは、より一層枕が重要になってきます。
その他、交通事故などで、むち打ち症になってしまった人も枕の重要性が身にしみているのではないでしょうか。
このような首の状態にある人は、起きている時と同様、睡眠中であっても正しい首の位置を保ち、理想的な姿勢の保持が何より重要になってきます。
適切な枕を使って寝るのは、痛みやしびれといった様々な症状軽減するための治療の一環であるといってもいいでしょう。
それぐらい枕の持つ意味は大きいのです。
頸椎の病気ばかりではありません。
肩こりや腰痛、さらに頭痛や顎関節の痛みも枕によって改善できます。
さらに、吐き気やめまいなどの自律神経の症状。
無力感や抑うつ感なども枕の変更で軽減されているとの症例がたくさん発表されています。
枕が健康にそれほど重大な影響を与えるのです。
寝ながら健康維持ができる枕にもう一度着目する必要があるでしょう。
枕の選び方で大切なのは「高さ」と「硬さ」
枕を選ぶ際には、多くの方は「素材」を気にします。
しかし、それだけではなく、いろいろなポイントをチェックする必要があります。
もちろん、素材は無視できませんが、それよりも本当に重要なのは「枕の高さ」なのです。
枕の高さは、直接首に影響するので、当然かもしれません。
そして次に重要なのが「硬さ」です。
この硬さは寝返りのしやすさに関係するので、とりわけ重要かもしれません。
そして最後に素材とその肌触りなのです。
ここに枕選びの本当に重要なポイントが隠されています。
枕を選ぶ際に大切なのは素材だけではないのです。
本当に重要なのは「高さ」と「硬さ」なのです。
枕の高さの選び方
しかし、「私は昔から高めの枕が好きなんです」とか、「やっぱり枕は低くて硬い方が寝やすいんですね。旅先のホテルなどで枕があまりふわふわしているとどうやっても眠れないのです」などと言う声を聞きます。
実はこれ、とても危険な兆候です。
もちろん、自分の好みはあるでしょう。
枕の高さにも、それぞれ好みがあり、決して無視できません。
しかし、自分の好みをあまりにも優先しすぎるてはいけないのです。
「高めが好き」「低めが好き」程度ならまだいいのですが、これがエスカレートして「高い枕でなければ眠れない」など、あまりにも偏った好みだと、その枕によって不眠を助長し、健康阻害してしまうのです。
うつ伏せ寝は危険
中には「いつもうつ伏せで寝ているので枕は使いません」と言い切る方もいます。
しかし、これも熟睡の観点ではあまりおすすめできません。
なぜなら、人は寝ている間に何度も寝返りを打つのです。
一度寝てしまって朝まで不動はありえません。
さらに言えば、うつ伏せ状態が寝ているときの姿勢はとても不自然なのです。
うつ伏せ寝は、脊椎に大きな負担がかかるので、実はあまり褒められた寝姿勢ではありません。
つまり、元々自分に合ってない枕が原因で上向きの睡眠姿勢や横向きでの寝姿勢が辛くなり、結局うつ伏せに行き着いてしまったのです。
正しい高さの枕の使用で、仰向けの正しい姿勢で寝る習慣が身につくのです。
枕によって理想の首の角度と深さを維持
睡眠中の脊椎の状態は、楽に寝返りがうてるかにも影響してきます。
背骨が歪んだ状態で寝ていれば、寝返りをうつにも必要以上にエネルギーが必要となり、無駄に筋肉を収縮させなければなりません。
これでは、本来休めるべきはずの筋肉や靭帯が休まらないのです。
つまり、本来はリラックスをして寝るはずの状態であるにもかかわらず、逆に筋肉や靭帯を酷使してしまうのです。
これは本末転倒と言わざるをえません。
体を休めるための睡眠が、逆に体を痛めつけてしまっているのです。
これが肩こりの原因になるので、肩こりを解消したいのであれば、自然な寝返りがうてる枕がおすすめになります。
マットレスと首の角度は約5度が理想
具体的には、マットレスと首の角度が約5度になるのが理想的と言われています。
頸部のすき間の深さは人によって多少違うものの、一般的には1~6cm程度でしょう。
これに合った枕を選ぶと首や肩への負担が少なく自然な寝姿勢が保たれ、眠りやすいのです。
頸部のすき間の深さに合わない高すぎる枕、または低すぎる枕を選ぶと、首や肩・胸の筋肉に負担がかかり、気道を圧迫するために呼吸がしにくく寝心地が悪くなります。
つまり、枕を選ぶ際は、安定的に呼吸が確保でき、重量のある頭部をきちんと支えてくれるだけの弾性があって、発汗対策としての吸湿性や放湿性のよい素材の選択が、なにより大事になります。
当然、寝返りをして横向きになった場合も考える必要があります。
肩先から側頭部全体を支えるだけの奥行きが必要になるのは言うまでもありません。
理想の角度を作るために「タオル」などを使って調整してみるのもいいでしょう。
枕の素材の選び方
日本古来からの伝統的な枕素材の代表と言えるものは、やはり「そばがら」ではないでしょうか。
そばがらは、その名の通り、麺の実を脱穀した後に残る種皮です。
三角形の悪徳な形をしているため一つ一つの粒の間に隙間が多く、通気性や吸湿性や弾力性がいずれもとても優れているのです。
殻の間の空気が断熱材の役目を果たすため、熱をよく拡散し、頭を冷やす効果があるので、湿気が多く、暑い日本の夏には最適な素材です。
植物由来の素材なので、とても通気性がよく、温度は体温より上がらないので、快適に寝られます。
そして、硬すぎず、軟らかすぎないので、寝心地がよい特徴があります。
そばがらの擦れる音が心地よく、寝返りで頭を動かしても不快ではありません。
そば栽培で不要になる殻をリサイクルできるので、価格面でも優位性があります。
また、枕としての役割を終えたそば殻は園芸用堆肥として使用できるので、地球に優しい素材といえます。
このように、利点が多いのが、そばがら枕の特徴なのです。
そばがら枕の問題点
ただし、天然素材であるためカビやダニの発生があり、 1年以上使っていると粒が潰れてしまい通気性や弾力性も悪くなります。
さらに、人によってはアレルギー反応を示す場合があるので、事前確認をしましょう。
最近では、このそばがらに防虫効果のある檜チップなどを混入した枕も登場してきています。
そばがらの涼しさに加えて、檜ならではの良い香りを楽しめるのは確かに魅力的でしょう。
快眠の条件のひとつは、「リラックス」です。
檜の香りにより、リラックスできれば、自然とぐっすり寝られると思います。
日本古来からある素材を活用した枕は、快眠に適しているといえます。
昔の人は、自然にある素材で快適な睡眠環境を創り出していたのです。
綿を使った枕
そしてもう一つ、昔からお馴染みの「綿」の詰まった柔らかい枕も日本固有の枕といってもいいでしょう。
枕素材としての綿には原料によって絹や木綿やポリエステルなどがありますが、もっとも一般的なのはパンヤだと思います。
適度の弾力性と吸湿性があるため枕やクッションによく使われている素材です。
しかし、使い込んでいくうちに劣化しやすく、弾力性も吸湿性も次第に失われていきます。
また、蒸れやすい特徴があるため、夏場には熱がこもりやすくなります。
季節により使い分ける工夫があってもいいかもしれません。
その他の枕素材の選び方
近年では快眠ブームの高まりもあり、セラミック枕や磁気枕など最新のテクノロジーを満載したユニークな枕も続々と登場しています。
そこに日本伝統素材である備長炭や小豆、梅干の種、竹チップ、檜チップ、桐チップ、さらには大理石や水晶といった石から陶器まで、様々な素材が枕に使用されるようになってきています。
まさに百花繚乱の枕産業といってもいいでしょう。
高反発枕と低反発枕
マットレス同様、高反発素材や低反発素材を使った枕が多く発売されています。
高反発枕の代表格と言えば「マニフレックス」や「めりーさんの高反発枕」でしょう。
低反発の中で有名な枕は「テンピュール」かもしれません。
マットレスと同じで、重い頭が沈み込んでしまい、頚椎を痛める可能性がある低反発の枕は健康によくありません。
高反発枕を使うようにしてください。
ニトリの枕
ニトリなどの量販店に行くと、多種多様な種類の枕が大量に陳列されています。
しかし、そのために消費者が混乱してしまう現象が起きています。
選択肢の増加は、嬉しい半面、選択が難しくなることを意味しています。
「自分に合う枕はなんだろう?」「合わなかったら肩こりが悪化しそうだな」と、どうしても慎重になってしまうのです。
そして、ニトリや無印良品などのお店に行き、多くの枕を試してみたり、色々な枕を購入して、自分にあったものを試そうとしますが、それでも決めかねる。
それだけ枕の選び方は難しいのです。
そんな簡単に自分に合った枕は見つからないのです。
横向き枕
うつ伏せ寝や仰向け寝ではなく、横向き寝に特化した枕があります。
うつ伏せ寝や仰向け寝では、いびきや無呼吸症候群になる方がいます。
また、肩こりや腰痛持ちの方は横向き寝が楽なので、意外とニーズがあるのです。
横向き寝は仰向けより体圧分散の支点や面積が減ってしまうため、より寝返りの打ちやすさが重要になりますが、その機能を有している横向き枕は重宝されるのです。
横向き枕の選び方のポイントは、頭を乗せたときに頚椎が真っ直ぐになるかどうかです。
頚椎がなるべく直線を維持できる高さが理想的だと言えるでしょう。
頚椎が真っ直ぐの状態であれば首への負荷を減らせます。
但し、慣れない人が横向き寝をすると、無駄な寝返りが増えてしまい、逆に睡眠が浅くなってしまいます。
無理に横向き寝を実践する必要はありません。
枕選びのポイント
前述の通り、季節により使うべき枕は違ってきますし「仰向け」「横向き」などの寝方によっても選び方が違ってきます。
また、体調は常に変化するので、その都度、枕の素材や高さを調整できれば理想的です。
つまり、「これっ!!」という枕があるわけではありません。
要は、本当に自分に合った枕を探すのはとても難しいのです。
枕選びで重要なのは、「大きさ」「素材」「高さ」「カタチ」です。
この4つのポイントが自分の体型や寝姿勢に合ったものを選ばなくてはなりません。
しかし、この4つのポイントがすべてではありません。
これ以外に考慮すべき重要な要素は、「好み」と「感覚」です。
寝心地はデータだけで決まるものではありません。
むしろ、「大きさ」「素材」「高さ」「カタチ」ではなく、好みや感覚の方が枕選びには重要な要素になると言ってもいいでしょう。
実際、身長や体重がまったく同じであっても、合う枕が一緒ではありません。
結局、最後は好みや感覚が大きな比重を占めるのです。
商品の説明やお店のアドバイス、そしてデータだけに頼るのではなく、自分の好みや感覚を重視しての枕選びが大切になるのです。