概要
女性や高齢者がマットレスを選ぶ基準
マットレスを選ぶポイント
寝返りのしやすさ
体圧分散
柔らかすぎず硬すぎない
マットレスの大切な役割のひとつは「体圧分散」です。
体圧分散とは「体重を分散させ、特定部位への負担を軽くすること」。
直立している人間の体重は足の裏だけにかかりますが、仰向けで寝ている状態では主に頭、背中、腰、足で体重を受けとめます。
中でも最も重さがかかるのが「腰」です。
腰には体重の約半分もの重さがかかるので、長時間寝ていると、この負荷が原因で腰痛になってしまうケースがあるのです。
特に筋肉量が少ない女性や高齢者は、自力で姿勢を維持しづらいため、睡眠中の腰への負担が増える傾向にあります。
その結果、寝返りが打てなくなり、血流が滞り、疲労が蓄積し、腰痛になるのです。
そこで必要とされるのが、体全体に負荷を分散させる機能。
これこそがまさに「体圧分散」で、これが寝返りのしやすさに直結します。
つまり、体重をできるだけ均等に分散し、特定部位だけに負荷がかからないマットレス選びが必須になるのです。
体圧分散できるマットレスとは
体圧分散に優れるマットレスの特徴は「仰向けに寝たときも、直立時と同じ背骨のS字姿勢が保てること」です。
具体的には、背中からお尻の一番高い位置を線で結んだ際、腰部分が凹んだ状態になり、横から見た寝姿がきれいなS字になるマットレスが求められます。
睡眠姿勢でS字が保たれているかは、仰向けになった際、マットレスと腰の凹みの間に手のひらが1つ程度の空間ができるかどうかで判断してください。
柔らかすぎるマットレスの場合
体重を支えられない柔らかいマットレスの場合、寝姿を横から見ると重い腰部分が沈んでしまうので、体が「く」の字になり、必要以上に腰に負担がかかってしまいます。
ハンモックで寝ているようなイメージが近いかもしれません。
毎日、この姿勢で寝ていれば腰痛になるのも頷けます。
硬すぎるマットレスの場合
硬すぎるマットレスも正しく体圧分散ができません。
背中とお尻のみがマットレス表面に接するような寝姿勢になり、それ以外の部位はマットレスに接していない状態になります。
これではリラックスできず、筋肉に余計な力が入ってしまうので、体を痛めてしまう可能性もあります。
また、ゴツゴツした感触で寝心地が悪く感じます。
マットレスのタイプと特徴で選ぶ
マットレスのタイプ
内部にスプリングが入っったコイルマットレス
ウレタン素材のノンコイルマットレス
ウレタンマットレスには「高反発」と「低反発」がある
マットレスに必要な機能は「寝返りのしやすさ」ですが、どのマットレスにもこの機能が備わっているのでしょうか。
マットレスと言っても、多くの形態や素材があります。
サイズや価格もピンキリで、本当に多種多様な商品が販売されています。
寝具売り場で見回した際、どれも同じように見え、それぞれに差がないように映るかもしれませんが、実は内部構造や寝心地が全然違うのです。
すべてのマットレスを対象にできませんが、主なマットレスの種類と特徴を解説していきます。
コイルマットレス
ボンネルコイルマットレス
ボンネルコイルマットレスは、らせん状に巻いたコイルスプリングを連結させたマットレスです。
寝心地はやや硬めで、弾力は強めなので、やわらかめの寝心地が苦手な方には最適かもしれません。
マットレス内部はコイルがむき出しになっており、空間があるため、通気性がよく、湿気がこもりにくい特徴があります。
ただ、コイル同士が連結しているので、少しの動きが他のコイルに伝わってしまい、揺れが気になります。
2人で寝る場合などは、横の人の寝返りなどが振動として伝わってしまうので、あまり推薦はできません。
弾力 | 硬め |
通気性 | よい |
メリット | 作りがシンプルなので価格が手頃で、安定感がある |
デメリット | コイルが干渉し合うので、揺れが気になる |
価格 | 比較的安い |
おすすめしたい方 | ・価格を優先したい ・硬めの寝心地が好き ・比較的短期で買い換えようと思っている |
ポケットコイルマットレス
マットレス内部のコイルが、それぞれ独立している形態のマットレスです。
柔らかめの寝心地で、高級マットレスのジャンルでは最も売れている商品のひとつです。
ポケットコイルマットレスは各コイルが不織布でラッピングされ、独立しているのが特徴で、点で体を支える構造になっています。
振動が伝わりにくい特徴があります。
弾力 | 普通 |
通気性 | 普通 |
メリット | コイルが独立しているため、揺れが少なく、寝心地がよい |
デメリット | 身体が沈みやすい |
価格 | 平均的~比較的高い |
おすすめしたい方 | ・腰痛がある ・柔らかい寝心地が好き ・2人で使用したい |
ウレタンフォームマットレス
近年、最も売れ筋の「高反発マットレス」などはウレタンフォームマットレスに該当します。
コイルがないので「ノンコイルマットレス」とも呼ばれます。
人気商品では「雲のやすらぎ」「モットン」「マニフレックス」「エムリリー」「エアウィーヴ」「トゥルースリーパー」「テンピュール」などが有名です。
衝撃を分散させる素材で作られ、主に「高反発」と「低反発」の2種類がありますが、低反発は腰痛が悪化すると評価されており、最近はあまり支持されていません。
低反発マットレスの代表格である「トゥルースリーパー」や「テンピュール」を購入しようとしている場合は、再考が必要かもしれません。
高反発マットレス
売れ筋の高反発マットレスは、適度な硬さで理想的な寝姿勢が維持できる上に寝返りを補助する効果があります。
適度で自然な寝返りにより、血流が促進され、筋肉やじん帯の老廃物が浄化されるので、疲労が蓄積しにくいと言われています。
腰痛や肩こりで悩んでいる方には最適なマットレスでしょう。
耐久性に優れ、その上比較的寿命も長いので、メンテナンスを怠らなければ10年以上は使えるはずです。
軽量で持ち運びが容易なので、簡単に陰干しができ、衛生的でもあります。
中には丸洗いができるマットレスもあるので、カビやダニの心配もありません。
「雲のやすらぎ」「モットン」「マニフレックス」をはじめ、多くの種類が発売されており、選択肢が豊富なのも利点です。
弾力 | 最適 |
通気性 | よい |
メリット | ・理想的な体圧分散で自然な寝姿勢が保てる ・衛生的 |
デメリット | 特になし |
価格 | 平均的~比較的高い |
おすすめしたい方 | ・硬めの寝心地が好き ・腰痛がある ・寝起きが悪い ・体が大きく体重が重め |
低反発マットレス
低反発マットレスは、NASAで考案されたスポンジのような衝撃吸収素材を使ったマットレスの総称です。
重みに反応してゆっくりと体が沈むため、包み込まれるような寝心地を味わえます。
しかし、マットレスと身体が密着しすぎるため、寝返りの回数が減り、睡眠の質が安定しなくなります。
寝返りが減るため、血流が滞り、筋肉やじん帯の疲労が回復されず、腰痛が悪化するとの意見が多いようです。
近年では「低反発マットレスは腰痛によくない」が一般的な考え方で、あまり推薦できないのが本音です。
また、ウレタン素材なので通気性はよくありません。
特に夏は体温の逃げ場がなく、異常に熱が籠もるので、大量の汗をかきますが、それをスポンジ素材が吸い込んでしまうため、臭いが気になる場合があります。
それが原因でカビが発生し、すぐに廃棄になった事例も多いようです。
衛生的にもよくないので、できれば買わない方がいいマットレスだと言えるでしょう。
弾力 | 柔らかすぎる |
通気性 | 最悪 |
メリット | 柔らかい寝心地 |
デメリット | ・通気性がよくない ・夏は暑く寝苦しい ・洗えないので不衛生 ・体が沈んで腰に負担がかかる |
価格 | 平均的 |
おすすめしたい方 | 基本的には推薦できない |
マットレスを選ぶ際のチェックポイント
マットレスを選ぶポイント
低反発マットレスはNG
寝返りのしやすさ(体圧分散機能)を確認する
通気性も重要
このように、マットレスには多くの種類がありますが、ひとまず「低反発マットレスは絶対にNG」だと断言してもいいでしょう。
特に筋力が少ない女性や高齢者の方は腰痛の懸念があるので、低反発マットレスを選択肢から消してください。
ということで、低反発マットレス以外の選択肢から選びますが、どんな点をチェックすればよいのでしょうか。
誰でもできる簡単なチェックポイントをご紹介しておきます。
寝姿勢の違和感をチェック
仰向けの寝姿勢が心地よいと感じるマットレスは合っているはずです。
その際、腰とマットレスの間に空間が2〜3cm程度でき、背骨のS字状態を維持できるのが理想です。
背中や腰が必要以上に沈み込みすぎないか、マットレスが体に密着しすぎないか、自然に寝ている状態で余計な力が入っていないか、適度は反発力があるかなどをチェックしてみてください。
寝返りのしやすさをチェック
忘れられがちな「寝返り」ですが、睡眠の質は寝返りで決まると言っても間違いではないくらいなので、まずは寝返りの打ちやすさを確認してみてください。
寝返り回数の減少は、血流の悪化を招くので、寝返りのしやすいマットレス選びはなにより重要です。
適度な反発力があり、それがスムーズな寝返りをサポートしてくれるような機能があるマットレスが理想です。
不快な揺れをチェック
コイルマットレスの場合は、不快な揺れの有無を忘れずにチェックしてください。
特に2人で同じベッドを使うのであれば、横揺れがあると睡眠が妨げられてしまうかもしれません。
とりわけボンネルコイルマットレスの場合は、揺れが伝わる構造なので、慎重に確認してみてください。
軋み音の有無をチェック
コイルマットレスの場合、コイルから音が出る場合があります。
ミシミシするような音が発生し、それが気になるようなら、寝ながらストレスを感じてしまうでしょう。
睡眠はストレス解消の意味もあるので、それでは本末転倒です。
朝まで快眠できる環境がつくれるかの観点でマットレスをチェックする必要があります。
通気性をチェック
日本の梅雨と夏は高温多湿なので、マットレスの通気性は重視すべきでしょう。
低反発マットレスに代表される通気性のよくない素材は、湿気がこもり、カビやダニの発生が懸念されます。
カビやダニはアレルギーの原因になるので、アレルギー体質の方は特に注意が必要です。
また、赤ちゃんや小さなお子様のいる家庭であれば、マットレスの衛生面は重視しなければいけないポイントなので、絶対に通気性のよいマットレスを選んでください。
実際にマットレスに触れて選ぶ
マットレス売り場でやること
高反発マットレスを中心に選ぶ
寝返りを打ってみる
口コミを参考にネット通販で買ってもOK
マットレス選びの条件を総合すれば、やはり一押しのマットレスは「高反発マットレス」になるでしょう。
寝心地や寝返りサポートなどの機能面、通気性やメンテナンスのしやすさなどの衛生面、ストレス面、価格面(コスパ)、重量などがその理由です。
もちろん、コイルマットレスも悪くはないのですが、重いのが最大のネックになります。
女性や高齢者の場合、重量のあるコイルマットレスは移動させられないので、結果的に万年床になってしまい、マットレスにカビが生え、長く使えないとのパターンになりやすいのです。
その点、高反発マットレスは有利です。
女性でも高齢者でも片手で持ち上げられる重さの高反発マットレスは沢山ありますし、三つ折りのマットレスであれば、屏風のようにして室内で陰干しができるのです。
これなら衛生的な環境を維持できるので、マットレスの寿命の長くなるのです。
「重さ=移動のしやすさ」の点だけでも、高反発マットレスの方に分がありますし、その他を含めた総合力においても高反発マットレスの方が上回っていると思います。
では、どんな高反発マットレスを選ぶべきなのでしょうか。
そのチェック手順を解説していきます。
手で押さえてみる
両手でマットレスを押さえてみてください。
理想的なものは、手で押さえたときに深く沈み込むものの、適度な反発力があるマットレスです。
柔らかさと硬さ(反発力)のバランスが取れているかを押す力で判断してみてください。
座ってみる
少し勢いをつけて座ってみると、マットレスの真の機能が把握できます。
すぐに衝撃や振動を吸収してくれれば、そのマットレスの機能は本物です。
座ったときに「柔らかい」と感じるようであれば、実際の寝心地に影響するかもしれません。
仰向けに寝てみる
仰向けに寝転がってみてください。
特に意識せず、自然体で寝るのがポイントです。
その際、腰やお尻といった、体重がかかりやすい部位に負荷がかかっていると感じるなら、そのマットレスはNGです。
体圧分散ができていないようであれば、寝返りが打ちにくいはずなので、腰を痛めやすくなる可能性が大です。
横向きに寝てみる
実際の睡眠は仰向けばかりではないので、横向きに寝るのも大切です。
左右両方の横向きで寝てみて、圧迫感がある部位はないかを確かめてみましょう。
特に首や肩付近の違和感をチェックしてみてください。
寝返りを打ってみる
寝返りを打ち、マットレス自体のサポート力(反発力)を確認してください。
力を入れずにスムーズに寝返りが打てれば、寝返りの度に目を覚まさなくなるので、朝まで快眠できるようになります。
実際の確認が必須ではない
実際に寝具店に行き、現物を確認しなければいけないわけではありません。
今はインターネット内に多くの高反発マットレスの口コミや評判があるので、それを参考にすれば、おおよその評価を知れます。
また、高反発マットレスは真空パックで送られてくるため、思っている以上に通販で買いやすくなっています。
店舗に行って、あれこれ迷うよりは、ネットで口コミや評判をチェックし、そのままネットで購入する方が手間はいりません。
さらに、最近は「返品保証」がついている高反発マットレスも多く売られています。
購入後90日~100日であれば、どれだけ使っても無料で返品できるのです。
返金保証があればノーリスクと同じ。
合わなければ返せばいいだけ。
この返品保証制度により、まずは試しに買ってみても大丈夫なようになっているのです。
マットレスのサイズの選び方
マットレスサイズの選び方
使用シーンをイメージする
部屋の広さに合わせる
本当にリラックスして快眠するために必要なマットレスの幅は「体の幅にプラスして、左右15cmずつ余裕があること」と言われています。
女性や高齢者の方で「独身だから」「一人で寝てるから」と無条件でシングルサイズを選択してしまう場合がありますが、再考してみてください。
真の快眠が得たいのであれば、少し余裕のあるサイズ選びを排除しない方がいいでしょう。
シングルサイズは横幅が約100cmほどが一般的なので、1サイズ大きめのセミダブル(横幅120cm)を選べば、これまで以上の開放感を得ながら、リラックスした睡眠ができるでしょう。
マットレスの長さを選ぶ基準
大切なのは幅だけではなく、長さも重要な判断材料のひとつです。
一般的なベッドの長さは、195cm前後で統一されていますが、最近では住宅事情なども考慮して、190cm以下のショートサイズも用意されている場合があります。
女性や高齢者の一人暮らしの場合は、ショートサイズで十分かもしれません。
逆に高身長の方のために、200cm超えのロングサイズも売られているので、無理に小さなマットレスに寝るのではなく、伸び伸びと寝られるように大きめのサイズを選ぶ手もあります。
2名で使用する場合
「2人で使うから、ダブルベッド」も早計です。
2人の体型や睡眠スタイルによっては、ダブルベッドであっても窮屈に感じられるかもしれません。
部屋の広さに制約がない方には、クイーンサイズやキングサイズの選択肢もありだと思います。
部屋の広さや使い勝手を考慮する
ベッドは思ったよりも場所を取るものです。
あまり大きいベッドフレームを買ってしまったために、他の家具が置けなくなったり、部屋そのものの使い勝手が悪くなってしまうケースがあります。
酷い場合には、チェストの引き出しが引けなくなったり、クローゼットが使えなくなる場合もあるようです。
また、部屋の導線の確保も忘れないようにしましょう。
ドアからテーブルまでスムーズに移動できるか、また、無駄な動きがなく、ベランダまで行けるかなどは、日々の生活の中で欠かせない条件になってきます。
さらに、大型マットレスは、ドア以外からの搬入経路が必要になる場合があります。
マンションの場合は、エレベーターで運べるかを事前に確認しておく必要がありますし、一戸建ての場合は、窓からの搬入は可能かなど、搬入業者と打ち合わせておいた方がいいでしょう。
マットレスのメンテナンスのしやすさで選ぶ
マットレスのメンテナンス
重量が大きな要素のひとつ
マットレスを定期的に回転させる
マットレスは肌に密着するので、衛生状態を維持するのが難しい商品です。
また、洗えないマットレスも多いので、より工夫したメンテナンスをしなければいけない場合もあります。
そのために、まずすべきは「陰干し」です。
風通しのよい場所にマットレスを移動させてみてください。
干すことで、マットレスに溜まった湿気や臭いも放出されます。
できれば2~3日に1度、どんなに忙しくても2ヶ月に1度を目安に陰干ししてみてください。
マットレスの重さがポイント
そのためには、マットレスの重量がポイントになります。
重いマットレスは移動が困難になるので、結局、メンテナンスがおざなりになってしまいます。
購入の際は、メンテナンスを考慮し、マットレスの重量チェックが必要になります。
比較的軽量な高反発マットレスであれば、女性や高齢者でも簡単に持ち上げられます。
見過ごされがちですが、「マットレスの重量」もチェックする必要があるのです。
マットレスを回転させる
マットレスを一定の面、一定の方向で使い続ける人がいますが、これはNG行為です。
同じ面、同じ方向で使っていると、お尻や腰部分など、重みがかかりやすい場所がヘタり、マットレスの寿命を縮めます。
2~3ヶ月を目安に、頭と足の部分を回転させて使いましょう。
これでマットレスの劣化に歯止めをかけられます。
さらに、半年に1度くらいのサイクルで、マットレスの表と裏をひっくり返します。
電極がある医療マットレスを除いた殆どのマットレスは天地無用の作りなので、全ての面をローテーションしても問題ありません。
ローテーションは寝心地に影響しないので、ぜひ実践してみてください。
この際もマットレスの重量がポイントになります。
女性や高齢者の場合、なるべく軽いマットレスを選ぶのがポイントです。
ローテーションが容易な重さのマットレスなら、ストレスなく作業ができるはずです。